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常田所長 オーストラリア出張

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2026年5月下旬から6月にかけて、常田所長がオーストラリア各地を訪問しました。 まず西海岸のパースを訪れ、そこから小型機で約1時間の Square Kilometre Array (SKA) 専用飛行場へ移動しました。現地では建設中の巨大電波望遠鏡SKA-Low (写真1、2、3) をはじめ、Australian Square Kilometre Array Pathfinder (ASKAP) および Murchison Widefield Array (MWA、写真4) の2つの電波望遠鏡を、強行日程ながら1日かけて視察しました。各施設では建設・運用責任者から詳細な説明を受けるとともに、多くの関係者との意見交換を行いました。SKAの建設が順調に進捗していることに加え、ASKAP・MWAという独創的な望遠鏡が、Fast Radio Burst(FRB)の観測をはじめとする重要な科学成果を生み出していることを改めて実感しました。また、広大な砂漠地帯に展開する望遠鏡群の壮大なスケールと存在感に圧倒される訪問となりました。

写真1(左): Square Kilometre Array (SKA) Low (スクエア・キロメートル・アレイ・低周波) のアンテナ群。人工雑音の少ないオーストラリア西部の砂漠地帯が建設地に選ばれています。
写真2(右): SKAサイトを走り回るカンガルー。 写真3(左): SKA-LowのdirectorのSarah Pearce博士(右)と常田所長(左)。
写真4(右): Murchison Widefield Array (マーチソン・ワイドフィールド・アレイ)。 写真5(右): 開発中のすばる望遠鏡次世代補償光学 ULTIMATE-Subaru のコア部分。説明しているのは、現地に長期滞在中の大金 原 (おおがね はじめ) 国立天文台 助教。Mount Stromlo Observatory 内にある The Advanced Instrumentation and Technology Centre にて。

その後、東海岸へ移動し、東部の3都市にある大学や研究機関を、これまた強行軍で訪問しました。各地では施設や実験室を見学するとともに、多くの研究者や関係者との意見交換を行い、オーストラリアにおける地上・宇宙天文学、宇宙開発、量子研究の最新動向について理解を深めました。 Mount Stromlo Observatory 内にある The Advanced Instrumentation and Technology Centre では、すばる望遠鏡 ULTIMATEの開発状況について説明を受けました(写真5)。ULTIMATE-Subaru プロジェクトは、最新の補償光学 (Adaptive Optics: AO) 技術を活用し、すばる望遠鏡において世界最高水準の空間分解能と広視野性能を実現することを目指すプロジェクトです。すばる望遠鏡を、広い視野を持つ「宇宙望遠鏡級」の高解像度観測装置へと進化させる画期的な計画と言えます。オーストラリアの The Advanced Instrumentation and Technology Centre とマッコーリー大学の Australian Astronomical Optics は共同で、ULTIMATE の主要コンポーネントの一つの開発を担っています。

今回のオーストラリア訪問を通じて、同国が補償光学を含む光の位相制御、フォトニクス、量子技術などの先端科学分野において、日本で一般に認識されている以上に力を注いでいることを実感しました。特に電波観測分野では、デジタル・ビームフォーミング、大規模相関処理、キャリブレーション技術などにおいて世界的な強みを有しており、それらの技術は既に産業界や宇宙状況把握分野 (SSA・SDA) への展開が進みつつあります。

また、オーストラリアは、大型電波望遠鏡プロジェクト、重力波観測、量子コンピューターなどの分野に不可欠な基幹技術を戦略的に開発することで、国際共同研究の中で独自の技術的地位を築いています。さらに、光衛星通信や超小型衛星の分野においてもユニークな貢献を行っています。

大型観測施設の建設に当たり、伝統的土地所有者の方々との長期的な信頼関係が築かれていることも大変印象的でした。ここで紹介した3つの電波天文台は、先住民である Wajarri Yamaji の人々が伝統的に暮らしてきた土地に位置しています。現在、このサイトは、「Inyarrimanha Ilgari Bundara, the CSIRO Murchison Radio-astronomy Observatory」という名称を持っています。「Inyarrimanha Ilgari Bundara」はWajarri Yamajiの言葉で、「Sharing Sky and Stars(空と星を共有する場所)」を意味するとのことです。この名称は、CSIRO (Commonwealth Scientific and Industrial Research Organisation: オーストラリア連邦科学産業研究機構) と Wajarri Yamaji との間で締結された土地利用協定 (ILUA) に基づいて付与されました。会議や式典の冒頭で「Acknowledgement of Country (伝統的土地所有者への敬意表明)」が行われていることも印象的でした。

日本とオーストラリアは、民主主義、法の支配、自由で開かれた国際秩序といった価値観を共有しており、科学技術分野においても長期的かつ安定した協力関係を構築できる基盤を有しています。今回の訪問は、両国の今後の協力関係を考える上で極めて有意義なものとなりました。オーストラリアと日本の科学技術分野における協力関係がさらに強化されることを願いながら、帰路に就きました。